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カウンセリングについて

6. 幼児期のトラウマ体験例

感情の記憶を探す

スキーマがどのような体験から構成されるのか?簡単な例をとって考えてみましょう

A子ちゃんの記憶

ある日、A子ちゃんは買ってもらったばかりの三輪車に乗って、ひとりで家の前の道で遊んでいました。
三輪車で走るのが楽しくていつい少し遠くまで来てしまいました。

心配になって家に戻ろうとして道を曲がったところ、目の前に大きな犬の顔が現れて びっくりしてしまったA子ちゃんは思わずハンドルに力が入り三輪車ごと道端に倒れてしまいました。

「痛い」と思ったらお膝のあたりから赤い血が出ていました。
あまりのことに頭がまっ白になってしまい身体が固まって声もでません。
おまけに、大きな犬が真っ赤な口を空けて「ワン」と吼えながら A子ちゃんに近づいてくるではありませんか。

それから後のことは、どうなったかよく分かりません。
A子ちゃんは泣きながら家の方に走りました。
いち早くA子ちゃんの泣き声に気づいたママが玄関に迎えに出てきて、 泣きじゃくるA子ちゃんをしっかり抱きしめて涙を拭いてくれました。

「痛かったのね?怖かったでしょ、もう、大丈夫よ。」と言いながら お膝にお薬を塗って包帯で巻いてくれながらいろいろお話をしてくれました。

しばらくママの膝の上でだっこしてもらったのでA子ちゃんはすっかり安心しました。
あとで、一緒に三輪車を取りに行った時に、 さっきの大きなワンちゃんはとても優しいワンちゃんだと教えてくれたので、 ママに手をつないでもらいながら、ワンちゃんの頭をすこしだけ撫でて見たら優しくクンと鳴きました。

B子ちゃんの記憶

ある日、B子ちゃんは買ってもらったばかりの三輪車に乗って、ひとりで家の前の道で遊んでいました。
三輪車で走るのが楽しくていつい少し遠くまで来てしまいました。

心配になって家に戻ろうとして道を曲がったところ、目の前に大きな犬の顔が現れて
びっくりしてしまったB子ちゃんは思わずハンドルに力が入り三輪車ごと道端に倒れてしまいました。

「痛い」と思ったらお膝のあたりから赤い血が出ていました。
あまりのことに頭がまっ白になってしまい身体が固まって声もでません。
おまけに、大きな犬が真っ赤な口を空けて
「ワン」と吼えながらB子ちゃんに近づいてくるではありませんか。

それから後のことは、どうなったかよく分かりませんが、
泣きながら家に帰ったB子ちゃんの家には誰もいません。
家の中に居てもB子ちゃん怖くてしょうがありません、お膝もチクチク痛みます。
どうしていいか分からずに泣きながらそのうち眠ってしまったようです。

次に目が覚めたときあたりは少し暗くなっていていましたが、相変わらず誰もいません。
心細くてまた泣きだしたB子ちゃんは、置いてきた三輪車のことを思い出してこんどは怖くなりました。
ママに知れたら怒られると思い心配で仕方ありません。
でも。大きな犬が怖くてどうしても取りにいけません。

すっかり暗くなった頃ママが帰ってきました。
B子ちゃんは昼間のことを言いたくても、五月蝿そうにされてママは晩ご飯の支度に大忙しです。
その日の随分遅くになって三輪車が無いことに気づいたママから「ダメな子ね。」と怒られました。
B子ちゃんは膝の傷は隠しておくことにしました。
B子は、大人になった今でも犬が怖くて近寄れません。

どうですか? 同じ体験をしたA子ちゃんとB子ちゃんですが、周囲の対応の差が全く違う体験として記憶され、体験から学習した認知にどのような歪みが生じたかについては、次にご説明します。

体験からの学習 → スキーマ(信じ込み)

上記は幼児期のごく日常的な体験を例にとったものです。 幼いA子ちゃんと、B子ちゃんは同じように恐怖体験しましたが、 体験からくる学習の差は二人にとってその後の人生に大きな差となって影響を与えると言っても過言ではありません。 では、どこがどのように違っているか見てみましょう。

A子ちゃんの体験から

対応

・恐怖体験に対して、ママからしっかり抱きしめられ(癒し)
・「痛かったのね」と(共感され)
・「怖かったでしょ」と(感情の言語化)され
・怖かった犬は優しい存在だと知る(安心感:慈しみの心)

学習

・私は守られて愛されている安心感
・感情は表現しても良い感情の言語化
・三輪車には気をつけよう

記憶

・小さい頃三輪車で遊でいてケガしたけれど 大丈夫

B子ちゃんの体験から

対応

・恐怖体験を受け止めてもらえなかった(恐怖・罪悪感)
・誰も聞いてくれない(自分は無価値だ)
・いそがしそうな母親の態度(無力感)
・感情の非言語化(感情の抑圧→無感動)

学習

・私は愛されるに値しない(無価値)
・誰も守ってくれない(悲嘆)
・感じないでいよう(抑圧)
・何もうまくいかないし自信がない(喪失感)
・愛されないのは私のせいだ(罪悪感)
・きっと悪いことが起きる(不安)

記憶

・いつも一人ぼっちだった
・親は助けてくれない
・大きな犬に襲そわれてケガをした
・世の中は恐怖に満ちている

同じ体験が周囲の対応の差によって、これだけ大きな認識の違いを生みます。
特にネガティブな感情の記憶は、同じような体験毎に強化されいよいよ揺るぎない確信となって認知されます。
これらはいわゆるスキーマ(信念・信じ込み)として潜在意識にしっかりと刻まれてします。

スキーマは、認知に歪みを誘発させ、日々の出来事をネガティブに捕らえてしまい行動に影響を与えます。
また人間関係でも否定的に捕らがちですので信頼関係が築けず、結果的にうまくいきません。
結果としてさらに自信をなくし将来にも希望を持つことがありません。

解決されない感情はいつまでもいつまでも心の奥底に潜み、恨みとなって止まります。
小さい頃から良い事なんてなかったし、これからだって良いことが起きるはずがない…。
と、結論づけてしまいがちです。